米国において国際シンポジウムを開催しました。
政府は、北朝鮮による拉致問題について国際社会の理解促進を図るとともに、一日も早い北朝鮮の人権状況の改善に向けた国際連携のあり方を探求することを目的として、5月2日及び5月4日、米国(ワシントンDC・ニューヨーク)において、加藤拉致問題担当大臣出席の下、国際シンポジウムを開催しました。(概要は、以下のとおりです。)
これらのイベントを通じて、拉致問題を含む人権問題に係る日米韓の連携強化や国連人権プロセスを活用した具体的戦略について議論を深めることができました。政府としては、今回の行事を、全ての拉致被害者の一日も早い帰国に結びつけるべく努力して参りたいと考えています。
1.戦略国際問題研究所(CSIS)との共催シンポジウム
「北朝鮮における人権問題の解決に向けて-日米韓の連携-」
”Taking a Stand Together for Human Rights in North Korea”
日時:平成28年5月2日(月)14:30~16:15(米国現地時間)
場所:戦略国際問題研究所(CSIS)(ワシントンDC)
出席者:加藤勝信拉致問題担当大臣、ロバート・キング米国北朝鮮人権問題担当特使、
イ・ジョンフン韓国人権大使、飯塚耕一郎「家族会」事務局次長、グレース・ジョ氏
(脱北者)、マイケル・グリーンCSIS上級副所長、ビクター・チャCSIS上級顧問
来場者:約100名
概要:
●加藤大臣:政策スピーチ(和文 PDF) (英文 PDF)
・国際社会に対して、① 安倍内閣の最重要課題である拉致問題に、政府の責任において最
優先で取り組んでいること、② 北朝鮮による拉致問題の現状及び悲惨さ、③ 日米韓を始
めとする国際連携の一層の強化の重要性について発信。
●イ・ジョンフン韓国人権大使
・北朝鮮の人権侵害問題は、日米韓共通の問題であり、緊密な連携が求められる課題。
・目下、国際社会は、北朝鮮の「人道に対する犯罪」について説明責任を追及すべきとき。
法的訴追の枠組みを検討すること自体が、北朝鮮にとり心理的な圧力になる。基本的価
値観を共有する韓日米の連携が重要。
●ロバート・キング米国北朝鮮人権問題担当特使
・拉致問題の解決に向け、引き続き日韓との連携を重視。
・北朝鮮人権状況の改善に向け、基本的価値観を共有する日米韓の協力の重要性を強調。
●脱北者:グレース・ジョ氏
・北朝鮮での食糧難により、餓死した兄弟、食糧の違法入手により罰せられた父親及び母
親や姉と中国に4回脱北するも強制送還された経験を説明。
・北朝鮮の人権状況の改善に向け、国際社会の連携の下、着実な努力が必要。
●拉致被害者御家族:飯塚耕一郎「家族会」事務局次長
・日本人拉致問題の概要及び御家族の帰国を待つ切実な思いを訴えた上で、拉致問題が国
際社会全体の問題であること及び国際社会の連携の必要性を訴えた。
上記ディスカッションの後、対北朝鮮政策のあり方や北朝鮮人権状況の改善に向けた中国の関与のあり方等につき、活発な議論が行われた。
※ CSISのホームページにてシンポジウムの模様をご覧いただけます。(外部リンク:英語)
2.日本政府主催シンポジウム「北朝鮮の人権状況 ~人間性の回復に向けた戦略~」
“Human Rights Situation in DPRK–Strategies towards Restoration of Humanity–”
日時:平成28年5月4日(水)10:00~12:00(米国現地時間)
場所:国連本部(ニューヨーク)
出席者:加藤勝信拉致問題担当大臣、マルズキ・ダルスマン国連北朝鮮人権状況特別報告
者、ロバート・キング米国北朝鮮人権問題担当特使、パラム-プリート・シンHRW
(ヒューマン・ライツ・ウォッチ)国際司法上級顧問、横田拓也「家族会」事務局長、
大澤昭一氏(特定失踪者御家族)、オ・セヒョク氏(脱北者)(この他、フロアには、
塚田一郎「拉致議連」事務局長、豪州国連常駐代表、EU代表部次席大使、韓国代表部
次席大使等が出席)
来場者:約150名
概要:
①北朝鮮の人権状況に係るプレゼンテーション
●拉致被害者御家族:横田拓也「家族会」事務局長
・拉致被害者本人、御家族の高齢化が進んでおり、一刻の猶予も無い。
・北朝鮮の独裁者を罰すべき。拉致被害者救済への支援を要請。
●特定失踪者御家族:大澤昭一氏
・(自身の弟も含め)拉致の可能性を排除できない者の救出に向けた支援を要請。
●脱北者:オ・セヒョク氏
・自身の凄惨な脱北の経験、父親が捕えられた時の経験を詳述。
・北朝鮮に人権教育を導入する有用性を提唱。
②ダルスマン特別報告者ほかのプレゼンテーション
●国連:ダルスマン北朝鮮人権状況特別報告者
・全ての日本人に関する包括的かつ全面的な調査を行うべく設置された特別調査委員会を
北朝鮮側が解体すると宣言したことを受け、拉致被害者や御家族の失望は大きく、一刻
の猶予も無い。問題解決に向けた国際社会の更なる連携強化が必要。
・深刻な人権侵害は安全保障上の挑発的行為と表裏一体の関係。最終的な責任者である金
正恩及び北朝鮮当局関係者に対する、法的説明責任の追及プロセスの確立に向け検討を
急ぐべき。北朝鮮に対しては、圧力と関与による二重のアプローチも重要。
●米国:キング北朝鮮人権問題担当特使
・米国において対北朝鮮制裁・政策強化法が全会一致で採択されたことは異例。
・北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)報告書の公表以来、北朝鮮人権状
況決議採択時の北朝鮮擁護国数の減少や、リ・スヨン北朝鮮外相の国連場裡への頻繁な
登場等から判断して、北朝鮮にプレッシャーがかかっていることは明白。国際社会は引
き続き北朝鮮に圧力をかけるべき。
●NGO:パラム-プリート・シンHRW国際司法上級顧問
・国際刑事裁判所(ICC)への付託は、現在では現実的に厳しいが、安保理でアジェンダ
として掲題し続けることが重要。
・韓国に、北朝鮮の指導者の責任追及を行う場を設けることは有益。
③質疑応答
・豪州、EU、韓国の各国代表部出席者及び塚田一郎「拉致議連」事務局長ほか多数の参加
者より、国連における今後の取組の展望や個別の人権侵害への対応等に関し、多くの発
言・質問がなされた。
④加藤大臣総括
・北朝鮮の人権状況改善に向けた国際連携、とりわけダルスマン戦略に基づき、知恵を出
し合うことの重要性を確認。
・日本も安保理メンバーとして、国連プロセスに積極的に関与しつつ、「対話と圧力」、
「行動対行動」 の原則の下、北朝鮮に問題解決を働きかける。